介護予防やリハビリは、歌ったり演奏したり、ダンスで体を動かすことで、笑って、楽しみながら心身を向上させます。
緩和ケア・ホスピスでは、各々の思い出の曲を手がかりとして患者さんひとりひとりに寄り添います。
自分を受け入れ、今を大切に生きていくお手伝いをします。
私自身、両親の介護を経験しています。父も母もだんだんとできないことが多くなり、精神的にも不安定に。介護をする私自身も自分自身を責めるなど精神的に苦しくなりました。
そんな自分を救ってくれたのが音楽の存在です。音楽療法を14年経験してきて、高齢者の方の笑顔を多く見ることができ、私自身とても勇気づけられました。
ひとりでも多くの人に、同じような思い出悩んでいる方にも音楽の力を使ってほしいと思います。
日本音楽療法学会認定
音楽療法士 馬場 久美子
私が大切にしていることばがあります。
「ことばを こえてね。」
佐藤初女さんのことばです。
佐藤初女さんのところには、心に悩みや苦しみを抱えた人がたくさん訪れ、初女さんは訪ねて来られた方をお料理でお迎えして、そしてみんなそのお料理を食べると元気になります。
びっくりですよね、料理(それもおむすびだけで元気になる!)を食べただけでどうしてそんなことが起きるの?って。
私は、 このことと音楽療法で起きることは 似ていると感じています。
音楽療法は、簡単に言うと 音楽を使って、クライエントをより良い状態にすることです。
私たち音楽療法士は 音楽を意図的に使い、それを繰り返しています。
それだけです。
こう言ってしまうと簡単で冷たいようですが、私たち音楽療法士は、何がこの方をこうさせているのか、この方にはどのような音楽が良いのか、体全部で、その方が発しているものすべてを感じようとと集中します。
そして そこでキャッチしたものをベースにしてその方に合う音楽は何なのかを考えて選択し、セッションしています。
だから冷たくないですよ。安心してくださいね。
ただクライエントの方々は、私たちが提供している音楽以上のものを受け取られてると感じます。
毎週行っている高齢者施設に入所しているYさんは音楽療法のある日は2時間近く前から玄関で私が来るのを待ってくれています。
話しかけるとそれまでの表情と全く違う満面の笑みで「待ってたんだよ〜」と答えてくれます。
普段不機嫌な時が多く老人ホームの職員の方々を手こずらせているとは全く思えない優しくて素直なあたたかな笑顔です。
私はYさんに対して時別なことをしている訳ではありません。
ただ毎週音楽の時間にともに歌を歌い、踊りを踊ったり、音楽ゲームをしたり、音楽活動をしているだけ。
音楽の中で、共に笑い合い、時には涙を流しているだけです。
Yさんの普段の活動と違うのことはたったひとつ、コミュニケーションのツールが音楽ということ。
このことはYさんに限ったことではありません。
それはどうしてなのか・・それは私が素晴らしい人間だから!では もちろんありません。
私は音楽療法で 少しでも生きていくことが楽になるように、そしてできることなら楽しくなることを願って、大げさではなくこころを込めてセッションをしています。
ちょと待ってー!こころを込めてお世話をすることならやってますけど。という声が聴こえてきそうです。
でも それだけでは、なかなかこころに届きにくい。
音楽療法をやっている私がこんなにも喜ばれるのは、そこに音楽があるから。
初女さんのことば「ことばをこえてね」
音楽はことばを超えています。
ことばでは説明することができない、言い表すことができない感情に気づかせてくれる。
そして、その思いに寄り添ってくれる。
それが音楽の力です。
音楽が私たちを近づけ、私のこころに寄り添ってくれる人、私の気持ちを分かってくれる人だと思わせるのです。
私の力はほんの少し、 ほとんどは音楽の力のおかげなのです。
理屈を通さず音楽はダイレクトにこころに届くからなのでしょうね。
きっと初女さんのおむすびもことばをこえて、ことばではないものがこころに届いたのではないでしょうか。
初女さんのおむすびはあなたを思って大切に丁寧に丁寧に握ったもの。それを食べると理屈じゃなくそのこころを感じる。だから元気になれる。それはことばにしてしまうと伝わらないのかもしれません。
音楽もことばをひとっ飛びにこえて、こころに届く。
もちろん私は初女さんの足元にも及びません。
でも 私は おむすびではなく、音楽で 少しでも生きる力を受け取ってもらえるようになりたいと思っています。
高齢者向け音楽療法